はじめてのカウンセリング

Adam Silverman "Space"

Adam Silverman "Space"

15年ほどの長い間、統合失調症という病気と付き合いながら、一流のデザイナーとして活躍し続け、いまでは幸せな家庭をもっている友人にモニターを頼んで、はじめてのカウンセリングを行いました。

  • いま一番望むのは、市民Aとして周りの景色に溶け込んで、目立たず普通の暮らしをすること(以前はとにかく個性的でありたいと思っていた)
  • 薬を飲んでいる自分を受け入れるのに時間がかかった(それまで気合いで直せると思っていたから)
  • いま、病状は落ち着いているけれど、薬を少し減らすだけで不安が襲ってきて不安定になる
  • 同じ病気でいま苦しんでいる人に、希望を与え、助けになりたい

という話を聞きました。長い付き合いですが、こういった話をゆっくりするのは久しぶりでした。

わたしは、ずっと、彼はピュア過ぎて生き辛い人なんじゃないかなぁと思っていました。本当は天真爛漫で、あまりにも優しい人だからです。

「市民Aになりたい」という彼の望みも、けっしてネガティブなものには思えませんでした。

小さい頃は、無邪気過ぎるほど無邪気で、甘えん坊の可愛い子どもだったのだと思います。エゴは、わたしたちが社会の中で生きるとき、保護者のような役割も担うのだと思いますが、その部分が未発達で、むき出しの心と魂で生きて来たために、個と集団の間で、ギャップにショックを受けたり、傷つくことが多かったんじゃないかなと思います。

本来持っている自分の個性をもっと表現しようとする中で、さらにギャップに苦しめられ、やがて成長したエゴが周りの声を必要以上に拾い集めて不安を紡ぎ出し、ショックが不信感に変わっていったように感じます。同時に、自暴自棄になっていたこの頃、この世界を、とことん試してやろうとしていた気もします。

押さえつけた個性は、目立つ服装など、目に見えるもので表現しても収まりきらず、信じられるものを失って、そのエネルギーは四方八方に回転し始め、自分という軸を外れてしまったのが発症のきっかけだったのではないでしょうか。

この頃の彼のデザインには、心臓をぎゅっと鷲掴みにされるようなものがありました。今もその繊細さや美しさは変わらないのですが、洗練されて安定したものになっています。

いま彼が「市民Aになりたい」と言うのは、ようやく手に入れた平穏な暮らしを邪魔されたくない、だから目立ちたくないという守りの気持ちも強いと思います。一方で、彼が「(病気や思い通りにならないことを)諦めて受け入れてるんだよ」と言う時、仏教の「諦観」の意味で言っているのだというのがよくわかって、なんと尊い魂だろうと思ったのです。個と集団のギャップに苦しんだ後、その自分を苦しめた社会を、自分とひとつであるものとして受け入れ始めているように思えました。いまは静かに、次のステップへの土台を作っている時期なのかもしれません。

彼が薬で抑えているのは、未消化の不安と、もうひとつ。本来この世で表現したかったことなんじゃないかと思います。未消化の不安に向き合う準備ができた時、未知の素晴らしい可能性が開けるのではないかと、とても楽しみに思います。

 

後日、改めて二人で話したとき、こんな話を聞かせてくれました。

「宇宙の真ん中に目があって、その目が地球にいる自分を見ている。宇宙の真ん中の目は自分で、地球にいる自分を見ながら、地球にいる自分の目を通して宇宙を見ている。宇宙は自分で、自分は宇宙だった。」

小さい頃から18歳ぐらいになるまで、テンションが上がり過ぎて頭が真っ白になると、この宇宙空間に居たそうです。そして、小さい頃、自分を指して母親に「これは誰なの?」と聞いていたそうです。

わたしは胸が震え、涙が出ました。この話は、本で読んだ宇宙そのものでした。

最後に、ここで紹介することを心よく了承してくれた友人に、心から感謝します。