「今、ここ」から力を奪うもの

「今、ここ」を実感する〈2〉

過去でもなく、未来でもなく「今、ここ」に目を向けようとするとき、頭の中で忙しく働き続ける思考は、一番厄介な存在です。思考は簡単に、心を過去や未来へ連れ去ってしまいます。

わたしには困ったことに考え過ぎる癖があります。けれど、心が過去や未来へ往来しながらでは「今、ここ」にある喜びに気付いて、「今、ここ」を100%楽しむことができません。

深呼吸をしたり美しい景色を見た時「今、ここ」に在る状態になるのは、その瞬間、余計な思考が停止するからだということがわかり始めて、普段の暮らしの中で、意識的に以下のことに気をつけることにしました。

  1. 「やること」も「言うこと」も、なるべく溜めない
  2. 今考えても仕方のないことは一旦「棚上げ」する
  3. 今できないことも、一旦「棚上げ」する
  4. なるべくまっさらな状態で、今一番したいことをする

 

「やること」も「言うこと」も、なるべく溜めない

公共料金の支払い手続きをする、メールの返信をする等々「多少は先延ばしにできるけど、いつかやらなくてはいけない、忘れてはいけないこと」はできるだけその場で片付けます。これだけで「やらなくちゃ」という考えにエネルギーを奪われることが減ります。頭の中のメモリーにこれらが溜まっていくと「面倒くさい」という気持ちがどんどん膨んで、生産的なことは何もせずに時間だけが経ってしまうことがよくありました。一方、ひとつひとつは難しいことではないので、習慣にしてしまえば何でもないことでした。

「言うこと」のほうは、わたしには難題でした。思ったことを飲み込んでしまう癖があったからです。この原因のひとつが、小学校4年生の頃、理科室での出来事でした。好奇心旺盛な子どもだったわたしは、先生が長い時間、顕微鏡をのぞき込んで何かを準備しているのが待ちきれませんでした。それで思わず「先生ばかり見ていて、いいなぁ」と言ってしまったのです。その直後、頬を打たれ、こっぴどく叱られたわたしは、以来「口は災いのもと」という固定観念を持ち続けていました。これに気付いた時は「なんと、くだらない」と思ったのですが、長年の癖はなかなか直りませんでした。

それでも「思ったこと」を、言うのが簡単な場面から意識的に口に出すようにしていくと、徐々にできるようになっていきました。「思ったことを言っても大丈夫なんだ」と安心し始めたのだと思います。ここで大切なのは、相手を責めたり、自分の考えを押し付けたりするのではなく「自分の思い」をただそのまま伝えることです。理科室でも「顕微鏡を覗くのが楽しみで、待ちきれない」と言っていれば、先生も打つことはしなかったかもしれません。

「言うこと」を溜めないようになると、後から「やっぱり言えばよかった」とか「どうやって伝えたらいいか」などと悩むことにエネルギーを使わなくてすみます。こうやって、少しずつ「今、ここ」から離れる時間を減らしていきました。

 

今考えても仕方のないことは一旦「棚上げ」する

今考えても答えの出ないことを、考え続けるのも止めました。「なぜなんだろう? 」とか「どうしたらいいんだろう?」という問いは「今はわからないけど、いずれわかる時が来る」と、一旦投げてしまいます。

答えは、お風呂でぼーっとしている時など、直後にやってくることもあれば、ずっと後から「あー!そういえば!」とわかることもあります。答えを与えてくれているのは、潜在意識かもしれないし、天使のような存在なのかもしれません。どうであれ、結果、思考だけに頼るよりずっと早く求めていた答えに出会えている気がします。

 

今できないことも、一旦「棚上げ」する

あれもこれもやりたい、と思っても「今、ここ」で出来ることは、ひとつです。できないこと、しないことで自分を責めるのではなく「そのうち必ずやるんだから待ってあげよう」と自分を信頼して、棚上げしてしまいます。忘れそうで心配なことは、メモを残します。いまは iPhoneがあるので便利です。リマインダーに、やるつもりの日にアラートが出るように設定して、頭の中からは外してしまいます。頭のメモリーを使うよりは、iPhoneのメモリーを使ったほうが、便利だし確実です(笑)。実際のところは、To Doリストが増える一方だったりもしますが、後から読み返すと、やる必要のなかったこともあります。そして、本当にやりたいこと、やるべきことは、必ず何度でも追いかけてきます。

 

なるべくまっさらな状態で、今一番したいことをする

「今、ここ」からエネルギーを奪うものを外していくと「時間」と「思考」にスペースが生まれます。自分の好きなことを100%楽しめる時間です。その時したいと思うことを、心配ごとのない、まっさらな状態でします。おやつを食べるとか目に留まった本を読むといった些細なことでも、格段に楽しいのがわかります。そして、たとえ小さなことでも、その時に一番したいことを実行して100%楽しむことは、願いを叶えやすくする基礎体力を作ってくれるんじゃないかと思っています(この話は、また別の機会に)。