植物を撫でて愛でる

Amber Queen

Amber Queen

植物を育てるとき、優しく話しかけたり褒めたりすると良いと言います。わたしは園芸が大好きで、そういう夢のある話も好きなのですが、正直なところ「そうだったら素敵だけど、そうではない気がする」と違和感を抱いていました。経験から、植物が受け取っているものは、言葉とか、そういったものではない気がしていたのです。

「植物のあっぱれな生き方」という本を読んで、謎が解けました。わたしたちが成長するとき「成長ホルモン」が働くように、植物にも「植物ホルモン」という物質があって、中でも「エチレン」というホルモンは「触られる」という刺激で発生するのだそうです。そしてこのエチレンには、背丈を低く茎を太くたくましくする作用があるそうです。つまり植物は、優しい言葉を理解していたわけではなく、その言葉をかけるときに「撫でられる」という刺激を受け取っていたのです。

道理でうちのベランダでも、手が届くところにある薔薇は背が低く頑丈で、手が届きにくい場所にある薔薇はひょろひょろと細い枝を長く伸ばしています。

背が低く茎がたくましいということは、しっかりした株に育つということ。大きな花を咲かせたときに、しっかりと支えることのできる、安定した土台ができるということです。

たぶん、植物にとって「撫でられる」ことは、気持ちが良いわけではなくて、むしろ一種のストレスなんじゃないかと思います。でもその刺激を受けて、この世界で生き抜いて大きな花を咲かせるために、もっと強く、もっとたくましくと自分を安定させるのではないでしょうか。

自生する植物と違い、不自然な植木鉢という環境で育つ植物には、人の手が必要です。彼らは世話を怠ると、葉の色を変えたり、突然蕾を落としたりして意思表示をします。「少し枝を整理してほしいんだな」とか「栄養が足りないんだな」とか、何をしてほしいのかがわかるようなサインを送ってきます。そんな彼らが、撫でられて強くなるという仕組みを持っているのは、なんともあっぱれな知恵だと思うのです。

わたしたち人間も、うれしいことや辛いこと、さまざまな経験をして学び、そのたびに強くなりながら、自分という軸をしっかりしたものにしていくのだと思います。どんな経験もより強い自分になるための力とできる植物のようなたくましさを持って、大きな夢を支えられるよう、しっかりと自分軸で生きたいものです。


農学博士の田中修さんが書かれた「植物のあっぱれな生き方」には、他にも驚くような植物の「賢く生きる」ために持っている仕組みが紹介されています。植物の在り方をリスペクトし、愛情を込めて彼らの秘密を教えてくれる、とっても面白い本です。